岩手日報社社長・主筆
東根千万憶 様
本日の「2022年度の基本方針」を拝読させていただきました。
卓越した見識をうかがい知ることができたとともに、「県民紙」の読者としてのお願いがあります。
新聞社の使命としての「記事の作成」の方針に関しては、まったくおっしゃるとおりでありますし、
私としても興味のある内容です。ここは主筆の部分でしょうか。
ここで私からのお願いとは、「記事の作成方針」ではなく「県民紙を発行する会社の運営方針」についてのお願いです。
岩手の抱える課題として、いろいろとありますが、私は一番に「若者から見た魅力不足」があげられると思います。
多くの企業が「人材不足」と言いますが、それはただの逃げで「企業としての魅力不足」が正鵠を得ているのではないでしょうか。
そして、一番欠けている魅力が「ダイナミックな人材活用」と愚考する次第です。岩手の空が黒い煙でおおわれている原因、の一つです。
ここで、私の中の御社のイメージです。
・歴史と伝統がある言論紙
・県民にとって記事になることは誇らしい(名誉)
・知的レベルの高い社員構成
特に、知的レベルについては「学校で一所懸命勉強を頑張って成果を出した人の集まり」というイメージです。
新卒学生から見たら「岩手の中のあこがれる企業」の最先端を走っているのは疑う余地がありません。
同じように、行政組織も似た層が集まっていると思います。
さて、先ほど申し上げた「ダイナミックな人材活用」について触れます。一番わかりやすいのが、学校教育の現場です。
現実として「50歳を過ぎなければ校長になれない」という不文律があります。
そんな規定はどこにもありませんが、現実はそうなっています。
そして、一番の問題は「教員自身もそう思っている」と言うことです。
こんな組織から生まれてくる人材が「若者に夢を語ること」はどれぐらい困難か、推察されると思います。
能力がないから、リーダーシップがないから「校長になれない」ならだれも文句はありません。
しかし、「50歳ではないから」を理由に校長になれないのでは、子供たちに対しても「そういう教育しかできない」のではないでしょうか。
そして、これは多くの行政組織に当てはまります。
いまだに「年功序列」が幅を利かせて、若者の夢を奪っています。
根底には「年上を敬う」と「業務を遂行する」がごちゃ混ぜになっているのは間違いがありません。
もちろん、多様性が乏しく、人口がどんどん増えていた「昭和」の時代には、適合していましたし機能も果たしていました。
単純に考えると、昭和の時代は
しがらみ、談合>多様性
高齢者<若者
だったので、年功序列が成果を上げていました。
価値観が一緒で、若者が多かったのですから。頑張れば、いつかは報われたのです。
ところが令和の時代は
しがらみ、談合<多様性 高齢者>若者
です。年功序列を支えている要素が、まったく逆転しているのです。すでに、システムとしては破綻しています。
これによって、行政のダイナミックさが失われているのは明白です。
しかし、これを変えるには、そのことを公約として選挙で選ばれた人でないと、変えることは不可能です。
さて、前置きが長くなりましたが、私の一番の論点はここです。
岩手を覆っている黒い煙の正体は、この「しがらみから抜けきれない」というもどかしさ、であると思います。
ここを、御社のようなレベルの会社が打破してくれれば、その黒い煙に一点の穴を穿つことができるのではないでしょうか。
私も、御社に何度か取り上げられたこともあり、社員さんとの交流を持たせていただきました。
誰もが、礼節をわきまえ知的レベルが高い素晴らしい社員さんであります。
ただ一点の曇りがあるとすれば、時代にそぐわなくなってきた年功序列の制度ではないでしょうか。
くれぐれも、これは不文律であるので、あくまで私の印象です。若手の言い分は、こうだと思います。
「もっと高い給料が欲しい、ではなく、もっと権限が欲しい」だと思います。
自らの権限で、もっとダイナミックに仕事をしたい、のだと思います。
しかしながら、従来の「失敗はだめなこと」という価値観では、年功序列に戻ります。
失敗は、成功へのプロセス、と考えるといかがでしょうか?
https://www.facebook.com/100002117112896/posts/4607475972666261/
こうすれば「失敗は成功へのプロセス」となり、従来の「失敗は不要」から「失敗は必要」となります。
こうなれば、若手の登用もどんどん進むと思います。
そして、学校組織で想像してもらえれば理解が早いかと思いますが
「30代の校長先生」がどんどん出てきたら、そんな学校から出てくる生徒たちも変わる気がするのです。
「失敗を恐れて無難に」の逆を行くのです。
今の教育制度だと、小学校→中学校→高校と進むに従い、快活性が無くなります。
笑顔の小学生が、能面のような高校生に変わっていき、皆と違うことを恐れます。その遠因は、こんなところにもあるのではないでしょうか。
私は、御社がその大きな影響力を使って、これらを実現したら岩手が変わる第一歩、になると感じています。
もちろん、私もやります。当社は150名中30歳以下が100人で、その半数が女性です。私の下の、右腕左腕は30代です。
しかし、いかんせん当社ではまだまだ実力が足りません。
御社が先行すると、その影響力から行政組織も変わってくると思います。
私は、学業を懸命に頑張って成果を出して「社会の役に立とう」と張り切ってくる学生が失望している姿を見るのが、本当に悲しいのです。
知的レベルが高いだけに、そういうことにも敏感というのは、皮肉以外の何物でもありません。
ぜひ、岩手を引っ張る企業としてさらなる進化をして我々に力を与えてください。
名実ともに県民紙となり、「言論」と「会社運営」の両面でリーダーとなっていただきたいのです。
駄文を読んでいただき、ありがとうございます。
なお、御社は新聞という公器である
またその社長となれば、民間人ではなく公人と思われる
と鑑み、このような形で書かせていただきました。
もし、不快に思われたり、失礼があれば大変申し訳ありません。
私としては、これも言論の新しい形である、という信念をもって書かせていただきました。